教師しんどい、辞める?
教師をしていて、「しんどい、辞めたい」と思った人も多いでしょう。
どうすればいいのでしょう。とにかく、手の打ちようがない。子どもが言うことを聞かない。身も心もへとへと。教師を辞めようと何度思ったか。こんなにしんどいなら収入が減ってもスーパーのレジ打ちの方がましと。収入の計算もした。でも何とかしなければと思い踏ん張ってきた。しかしもう限界・・・・・・・・・・・・・・。
でも、でも、ちょっと待って下さい。私たちとしばらくの間お付き合い願えませんか。私の考える打開策はお話ししますから聞いて下さい。
でもこうすればいいという「方法」の問題を議論する前に、なぜこんなことになったのかを考えませんか?
貴方のクラスは学級崩壊寸前なのかもしれません。でもこの事態は貴女個人の問題ではないのです。全国で起きている事なのです。それは各新聞社の「小学生に荒れが急増化」などの報道にもはっきりと表れています。
そんな大きな話は聞きたくないと思われるでしょう。それも分かりますが、大きな流れを見ることで自分がどんな激流の中でもがいているかが分かると少しは冷静になって考えることができるかもしれません。
基本的に「教室の荒れ」はあなただけのことではないし、あなたのせいではないのです。
子どもの気持ち
貴方は教師だからまだいいのです。
荒れている子供たちの心はどんな状況なのか考えてやってください。
彼らは常にイライラしています。自信がなく、どうやっても自分はダメだと思っている。親からいつも「勉強しろ」「勉強しろ」と口酸っぱく繰り返し言われつづけている。自分も勉強しなければならないと思っている。でも勉強はどうやっていいかが分からない。内容も頑張っても分からない。
もう何年も前からわからない。このままではどうにもならない。不安になり、その不安はどうしようもなく大きくなり、次第に絶望になってきている。どんなに頑張っても分かるようにはならない。俺は本当に頭が悪いのだと思う。どうせ自分はろくな仕事に就けないと思っている。真っ暗な未来しかない。・・・そんな気持ちなのでしょう。
ところで一見、中学校では「荒れ」は減ったかのように思われています。しかし逆です。現象としての「荒れ」は減ったかのように見えて「不登校」や「いじめ」などの行動に変化しているのです。つまり「荒れ」で表わすエネルギーも無くなり、次第に内向的に内に向けてむしろ深刻化しているのです。
学校の荒れ 校内暴力の増加
なぜこんなに学校が荒れるのでしょう? なぜ校内暴力はこれほど増えてきたのでしょうか?
特に最近の報道では低年齢化してきています。
これは大正大学の鬼頭教授の作成されたグラフで厚生省の青少年白書からとったものです。論文の狙いは中学生の校内暴力の数の変化ですが、警察が関与した事件の数だけの統計です。
注目して欲しいのは1977年から折れ釘のように線グラフが曲がり、校内暴力の生徒数が増加し続けていることです。なぜこの時期にこのような増加に転じたのか。その点について鬼頭教授もこの論文では明らかにしていません。でも理由は明らかです。1971年指導要領が変りました。「教育の現代化」と呼ばれる指導要領でした。僕の大学時代のことで全国で先生方のものすごい反対のデモが広がったことを覚えています。
この指導要領では何が変ったか、それは特に小学校低学年の学習時間が大きく変えられたのでした。
簡単に言うとそれまで3年かけて学んでいた同じものを1年間で終われとなったのです。3倍のスピード化です。驚くべき破壊的な処置です。それ以降、当然落ちこぼれた生徒が全国に溢れました。
彼らは暴れ、至る所に崩壊学級が出現しましたが、小学校では世間に隠し通しました。その子らが中学校に入ってきたのが指導要領実施の6年後、つまり1977年です。
私は当時中学校の生活指導担当の教員でした。この時の入学してきた生徒たちの様子は今でも覚えています。
それまでの新入生とは全く違う異様な集団が入ってきたのです。いわゆる「荒れる中学」の始まりでした。中学では教科担任制で、学級だけで封じることはできず、世間に知られていく流れは防げませんでした。
荒れの指導
学校は荒れました。ガラスというガラスは割られ、タバコの吸い殻が散乱し、空き時間はモク拾いに明け暮れました。ビニール袋と手ばさみをもってつばの糸がひく吸殻を集めました。毎時間250本、それを黒板に記録します。素手で便器に突っ込まれたコーラの缶を抜きます。男と言わず、女と言わず、教師たちは生徒の暴力にさらされ続けました。講師の先生が前歯を折られました。女性教諭があわやという目に遭った話を職員会議で語り、皆、怒りに悔し涙を流しました。シンナーが広がり、それを防ぐための地域組織まで作りました。シンナーで酔った卒業生が高層マンションの13階から落ちて亡くなる事件が起きました。シンナーは流行があり、減ってきましたが復活する恐れがないとは言えません。1977年とはもう50年以上前の話です。
でもこの波は決して去ってはいません。今も続いているのです。
なぜなら基礎学力の崩壊するカリキュラムの構造はそのままなのですから。